AnthropicのCISO代理「約18か月持ちこたえて」 AIより基本の対策を

Anthropic幹部「18か月耐えて」AIより基本のセキュリティ対策を Claudeのアプリアイコン

AI企業AnthropicでCISO代理(Deputy CISO、情報セキュリティの責任者の代理)を務めるJason D. Clinton(ジェイソン・クリントン)さんが、日本時間2026年10月23日2時43分にXで、「この4日間で事態はかなり悪くなったが、良くなる前にもっとずっと悪くなる」と投稿しました。セキュリティの責任者に向けて、AIのためではなく基本の対策のために、今すぐ取締役会に支援を求めてほしいと呼びかけ、「約18か月は持ちこたえる必要がある」と添えています。投稿の中身と、この数日に日本で起きたこと、中小企業やサイト運営者が今できる基本の対策をまとめます。

この記事の要点

  • AnthropicのCISO代理Jason D. Clintonさんが10月23日2時43分(日本時間)、「良くなる前にもっとずっと悪くなる」「AIのためではなく、基本のために取締役会に支援を求めて」「約18か月持ちこたえる必要がある」と投稿しました。
  • 投稿は10月23日18時(日本時間)時点で表示約282万回、いいね8,012件です。
  • 個人のXアカウントの投稿で、Anthropicの公式の見解として出されたものではありません。「この4日間」が何を指すか、「18か月」の根拠は、投稿には書かれていません。
  • 返信では、18か月後には安価なAIモデルが開発の現場で使われ、セキュリティのバグを出さなくなる「vulnzero」の状態になるという見方を示しています。
  • 日本でもこの数日、PHPの重大な脆弱性、UpdraftPlusの運営元への不正アクセス、JPCERT/CCの注意喚起の更新などが続きました。IPAの「情報セキュリティ6か条」など、公的機関の基本の対策を今のうちに確かめておきましょう。
目次

何が投稿されたか

as bad as things have gotten in the past 4 days, they are going to get a lot worse before they get better. security leaders, never let a crisis go to waste: please go to your boards and ask for help right now. not for ai, for the basics. (we need to hold on for ~18 months.)

(訳:この4日間で事態はかなり悪くなったが、良くなる前に、これからもっとずっと悪くなる。セキュリティの責任者の皆さん、危機を無駄にしないでください。今すぐ取締役会に行って、支援を求めてください。AIのためではなく、基本のために。(私たちは約18か月、持ちこたえる必要がある。))

Jason D. Clinton(@JasonDClinton)のX投稿(2026年10月23日2時43分・日本時間)

この投稿は、Clintonさん自身が8月21日(日本時間)に出した投稿を引用しています。そこでは「脆弱性の津波が、ほんの数か月のうちにやってくる。重要インフラにパッチを当てる時間は足りない。ネットワークの分離(エアギャップやデータダイオード)が今すぐ必要だ」と書き、米国家安全保障局(NSA)のサイバー部門の投稿を引用していました。NSAなどが、AIを使う攻撃者に狙われている米国の制御機器(PLC)の守りを固めるための指針を出したという内容です。

項目内容
投稿者Jason D. Clinton(@JasonDClinton)。AnthropicのDeputy CISO(CISO代理)
日時2026年10月23日2時43分(日本時間)
反応(10月23日18時ごろ)表示約282万回、いいね8,012件、ブックマーク4,313件、リポスト1,021件、引用529件、返信325件
引用している投稿本人の8月21日の投稿(「脆弱性の津波が数か月のうちに来る」)

Clintonさんはどんな人か

Anthropicのウェビナーのページでは「Deputy CISO at Anthropic」と紹介されています。本人のXのプロフィールにも「dciso at anthropic」とあります。Anthropicには2023年4月に最初のCISOとして入り、それ以前はGoogleで10年以上、Chromeの基盤のセキュリティなどを担当していました(SANS Instituteのプロフィール)。

今回の投稿は本人の個人アカウントからのもので、Anthropicの公式の発表やブログで同じ内容が出たわけではありません。

「18か月」について本人が返信で書いたこと

投稿には続きのスレッドはありませんが、「18か月後に何が起きるのか」という質問などに、本人がいくつか返信しています(時刻は日本時間)。

日時本人の返信(訳)
10月23日4時0分「18か月後に何が起きるのか」への返信で「vulnzero(脆弱性ゼロ)。スケーリング則によって、Mythos級のサイバーの能力が小さく安いモデルに入り、あらゆるソフトウェア開発がごくわずかな費用でモデルを使って、セキュリティのバグを出すことを永久にやめるようになる」(返信)
10月23日5時13分「今後9か月で、多くのハードウェアの脆弱性が見つかると思う」(返信)
10月23日6時54分「人のミスは、まだ管理しなければならないものとして残る。2026年になっても、個人情報が入ったS3バケット(クラウドの保存場所)をインターネットに公開している人がいる」(返信)
10月23日7時44分別の返信で「いや、2028年半ばごろにvulnzeroになるだけ。セキュリティの問題はまだたくさん残る」(返信)

本人の見立ては、強いAIで脆弱性が次々に見つかる時期をしばらく耐えれば、安いAIで開発の段階からバグを防げるようになるというものです。ただし、18か月という期間や「2028年半ば」という時期について、データや調査などの根拠は示されていません。「Mythos級」が何を指すかも、返信の中では説明されていません。

引用投稿の中には、「危機を無駄にするな」という言い方に批判的なものもありました。

この数日、日本で起きていたこと

Clintonさんは「この4日間」に何があったかを投稿に書いていません。米国にいる本人が日本の出来事を指しているとは限りませんが、同じ時期に日本のサイト運営者に関わる出来事が続いていました。

日付(日本時間)出来事
10月19日(英国時間)WordPressのバックアッププラグイン「UpdraftPlus」の運営元が、自社サイトへの不正アクセスと、UpdraftCentralの接続キーなどが流出したおそれがあると公表。21日には、流出した鍵で利用者のサイトに侵入され、管理者アカウントの作成や不正なプラグインのインストールがあったと説明(UpdraftPlusの記事)
10月20日〜21日PHPが重大な脆弱性2件(CVSS v4.0で9.2)を予告し、21日夜に修正版を公開。認証なしで外からコードを実行されるおそれがある。OpenAIは、セキュリティ企業のCalifがOpenAIのモデルを使って見つけたものだと発表(PHPの脆弱性の記事)
10月22日レンタルサーバーのロリポップ!が、PHPの脆弱性への予防措置として3時9分ごろから一部サーバーのお客様のサイトを止め、修正を当てて13時ごろに再開。脆弱性を狙ったとみられるアクセスの試みは確認されたが、不正アクセスや情報漏えいは確認されていないとしている(ロリポップ!の記事)
10月23日(投稿のあと)JPCERT/CCが、国内組織で相次ぐ不正アクセスの注意喚起を更新し、AIを使った侵入テストの仕組みを悪用した攻撃試行(ケースE)を追加(JPCERT/CCの記事)

その前から、日本では個人情報の漏えいの公表が増えていました。AB通信編集部の集計では、9月19日〜10月18日の30日間の公表は142件で、その前の30日の約3.5倍です(漏えい公表161件の一覧)。ただし、個別の漏えいの原因がAIだと確認した公表はありません。

中小企業・サイト運営者が今できる基本の対策

Clintonさんの言う「基本」の中身は投稿に書かれていませんが、日本の公的機関も基本の対策をまとめています。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、規模にかかわらず必ず実行すべき対策として「情報セキュリティ6か条」を挙げています。

IPAの6か条サイト運営者が確かめること
1. OSやソフトウェアは常に最新の状態にしようPHP、WordPress本体、テーマ、プラグインが修正版になっているか。サポートが終わったOSやソフトは使わない
2. ウイルス対策ソフトを導入しようパソコンの対策ソフトと定義ファイルを最新にする
3. パスワードを強化しよう10文字以上で使い回さない。重要なシステムでは、できれば多要素認証やパスキーを使う。初期設定のパスワードを見直す
4. 共有設定を見直そうクラウドの保存場所やNASの共有範囲をしぼる。異動・退職した人の権限はすぐ消す
5. バックアップを取ろう故障や誤操作、ウイルスでデータが消えたり暗号化されたりしても続けられるよう、バックアップを取る
6. 脅威や攻撃の手口を知ろう偽のメールや偽サイトなどの手口を知り、社内で共有する

JPCERT/CCも10月23日に更新した注意喚起で、既知の脆弱性の影響を受けるバージョンで運用しているなら修正済みのアップデートを当てること、業務に必要のない管理機能などがインターネットに公開されていれば公開をやめること、保存期間を過ぎたデータや使い終わったデータを残さないこと、不正アクセスの検知と初動対応の見直しなどをすすめています。

確かめられたこと・未確認のこと

確かめられたこと

  • Clintonさんが10月23日2時43分(日本時間)に、記事で訳した内容を投稿したこと(X投稿)
  • ClintonさんがAnthropicのDeputy CISOであること(Anthropicのページ、本人のXプロフィール)
  • 返信で、18か月後に「vulnzero」になるという見方を示したこと
  • 同じ時期に、日本でPHPの脆弱性、UpdraftPlusの運営元への不正アクセス、ロリポップ!のサイト停止、JPCERT/CCの注意喚起の更新が続いたこと

未確認のこと

  • 「この4日間」が具体的にどの出来事を指すか
  • 「約18か月」「2028年半ば」の根拠
  • Anthropicが会社として同じ見方をしているか
  • 「基本」として本人が何を想定しているか

まとめ

AI企業のセキュリティ責任者の代理が、AIへの投資ではなく「基本」への支援を今すぐ求めるよう呼びかけたことは、注目を集めています。18か月という期間の根拠は示されておらず、個人の見方として受け止める必要があります。それでも、更新、パスワードと多要素認証、共有設定、バックアップといった基本の対策は、日本の公的機関もすすめているものです。この数日の出来事をきっかけに、自社のサイトやシステムで抜けているところがないか確かめておきましょう。

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2026年10月23日18時(日本時間)時点の情報をもとにしています。

出典

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