米ウォルマートは2026年10月21日(米国時間)、AIエージェントが客の代わりにWalmartとSam’s Clubで商品を探し、買い物できるようにする仕組みを発表しました。エージェント専用の「Agent Profiles」、エージェントをMCPでつなぐ「Walmart Agent Gateway」、そしてエージェントが守るべき規約(Walmart Agentic Access Terms)の3つです。ウォルマートはすでに、MetaのMuse、ChatGPT、Geminiなどとの会話型の買い物の連携や、自社のAIアシスタント「Sparky」を提供しています。今回は、エージェントによる買い物そのものを、許可と制限つきで正式に受け入れる形にしました。
この記事の要点
- 「Agent Profiles」は来月から始まります。エージェントごとに専用のプロフィールを作り、エージェントの購入を自分の購入と分けて見られます。
- 購入は、毎回自分で承認するか、自分で決めた支出の上限(例:50ドル、100ドル、200ドル)の範囲で任せるかを選べます。エージェントの購入は初期設定では承認が必要で、プロフィールはいつでも止めたり消したりできます。
- 「Walmart Agent Gateway」は、エージェントがWebサイトを人と同じように操作する代わりに、MCPでウォルマート側のAI「Sparky」とやりとりして買い物する仕組みです。まず企業・開発者向けの招待制ベータで始まります。
- 規約では、エージェントは身元を明かすこと、カード情報を受け取らないこと、支払い方法を追加・変更できないことなどを定め、守らないエージェントはサイトから遮断するとしています。
- 対象は米国のWalmart.comなどで、日本から使えるかは公式に書かれていません。
何が発表されたか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表 | 2026年10月21日(米国時間)、ウォルマートの公式ニュース |
| Agent Profiles | エージェントごとの専用プロフィール。購入履歴を分けて見られ、承認のしかたと支出の上限を決められる。来月から開始 |
| Walmart Agent Gateway | エージェントがMCPでつながり、ウォルマートのAI「Sparky」とやりとりして買い物する窓口。企業・開発者向けの招待制ベータ |
| エージェント向けの規約 | Walmart Agentic Access Terms(2026年10月21日版)。身元の提示、客の同意、データの使い方、違反したときの遮断などを定める |
| 価格 | エージェントに見える価格は、人がWalmart.comで見る価格と同じ。適用される特典や手数料は購入前に表示 |
| 日本での提供 | 公式ページには書かれていない |
Agent Profiles:エージェント専用のプロフィール
ウォルマートによると、今はエージェントが客のアカウントでそのままログインするため、客が自分で買ったものとエージェントが買ったものが区別なく並んでしまいます。Agent Profilesでは、客のアカウントの中にエージェントごとの専用プロフィールを作り、エージェントの購入を分けて見られるようにします。
承認のしかたは客が決めます。購入のたびに承認するか、自分で決めた支出の上限(ウォルマートの例では50ドル、100ドル、200ドル)の範囲で、エージェントに購入を任せるかを選べます。ウォルマートは、クレジットカードに使う人を追加して、利用の上限を決めるのに近い、と説明しています。プロフィールはいつでも止めたり消したりできます。
使い始めの流れは次の3段階です。
- エージェントのアプリで、Walmart Agent Gatewayを通して初めて買い物をすると、そのエージェントのAgent Profileが自動で作られる
- 自分のWalmartアカウントにサインインして、そのプロフィールを許可し、アカウントにつなぐ(この操作はウォルマートだけが見る)
- 支出の上限を決め、すべてのエージェントの購入を確かめる。プロフィールはいつでも消せる
Walmart Agent Gateway:エージェント同士でやりとりする窓口
今のエージェントは、人向けに作られたWebサイトをブラウザーで操作して買い物しています。ウォルマートは、これは遅く、まちがいも起きやすく、途中で止まることもあると説明しています。Walmart Agent Gatewayでは、エージェントがMCPでつながり、ウォルマート側のAI「Sparky」とやりとりして買い物します。
- いつもの商品を探せる:客がよく買うパンや牛乳の銘柄などを、ウォルマートが探す手伝いをします。客の購入履歴全体や個人情報をエージェントに渡す必要はないとしています。
- データは直接届く:Webページを読み取る(スクレイピングする)代わりに、商品や配送の最新の情報を直接受け取れます。待ち時間や、余計なリクエスト、トークンの消費も減らせるとしています。
- 安全のしくみ:エージェントの身元の確認、権限の管理、操作の記録に加え、商品カテゴリーの制限や、リクエストの回数の制限を設けるとしています。
- 提供のしかた:初期のベータで、利用は招待制です。いつでも止まることがあり、説明されている機能は変わったり、全員が使えなかったりすることがあるとしています。利用の申し込みフォームがあります。
エージェント向けの規約で決めたこと
ウォルマートは、エージェントが客の代わりに買い物するときにできること、できないことを規約にしました。発表と規約の主な中身は次のとおりです。
| テーマ | 規約などの中身 |
|---|---|
| 承認 | エージェントの購入は、初期設定では客の承認が必要。支出の上限の範囲内でも、ウォルマートが追加の承認を求めることがある |
| Gatewayを通さない場合 | 購入手続きのたびに、客本人による確認(Human Consent Gate)を求める。エージェントが確認なしで購入を終えられるのは、Gatewayの条件を満たし、客が決めた上限などの範囲に収まるときだけ |
| 身元 | 求められたら、エージェントであることを示し、提供する会社の名前・住所・ドメイン、製品名とバージョン、問い合わせ先などを伝える。人のふりをしたり、人かどうかの確認をすり抜けたりしてはいけない |
| 支払い | エージェントはカード情報を受け取らず、支払い方法を追加・変更できない |
| 客の意図 | 客が意図した以上のことをしてはいけない。客が決めたブランド・価格の上限・カテゴリーなどの条件を守り、代わりの商品やおすすめはそうとわかるように示す |
| データ | 使えるのは作業に必要で客が許した情報だけ。ウォルマートの商品データの大量収集や、AIの学習、広告、分析への利用は禁止 |
| 返品 | エージェントが意図どおりに動かなかった場合も、ウォルマートの返品の手続きが使える |
| 違反 | 規約を守らないエージェントはサイトから遮断する。エージェントを提供する会社にも責任を問えるとしている |
プライバシーについては、客がエージェントのアプリに伝えた情報はそのエージェントの会社のプライバシーポリシーで扱われ、エージェントからウォルマートが受け取った情報はウォルマートのプライバシー通知で扱う、としています。
Amazonの公式の姿勢
同じ米国の大手ECでも、Amazonは別の立場を示しています。Amazonは2025年11月4日(米国時間)の声明で、客の代わりに買い物をする他社のアプリは、身元を隠さずに動き、参加するかどうかの店側の判断を尊重すべきだとしました。そのうえで、PerplexityのAIブラウザー「Comet」について、Amazonでの利用をやめるよう繰り返し求めてきたと説明しています。
また、2026年10月23日に確かめたところ、amazon.comとamazon.co.jpのrobots.txtは、ChatGPT-User、Claude-User、Perplexity-User、GoogleAgent-Shoppingなど、AIサービスのクローラーやエージェントの名前を挙げて、サイト全体への立ち入りを断っています。ウォルマートが条件つきでエージェントを受け入れる仕組みを用意したのに対し、Amazonは、参加するかどうかは店側が決めることだという立場をとっています。Amazon自身のAIの買い物機能の流れは、楽天とAmazonの広告×AI年表にまとめています。
日本から使えるか
| 確かめたいこと | 公式でわかること |
|---|---|
| 対象のサービス | 米国のWalmart.com(アプリを含む)とSam’s Club。規約の「Walmart」は、Wal-Mart.com USA, LLCとWalmart Inc.などを指す |
| 日本のウォルマート | ウォルマートは2025年3月、保有する西友の株式15%をトライアルホールディングスに譲渡すると発表している。今回の発表に西友や日本の店舗は出てこない |
| 日本から買えるか | 発表、Gatewayのページ、規約のどれにも、対象の国や地域は書かれていない。Walmart.comの利用規約では、米国外へ配送できるのは一部のマーケットプレイス出品者の商品に限られるとしている |
| 日本の企業がGatewayに申し込めるか | 公式に書かれていない(招待制のベータで、申し込みフォームはある) |
| 日本版のMuseやChatGPTから使えるか | 公式に書かれていない |
MetaのMuseは10月23日に日本での提供が始まりましたが(Muse日本提供の記事)、日本のMuseからウォルマートの買い物ができるかどうかは、ウォルマートとMetaのどちらの公式ページにも書かれていません。
日本のEC事業者にとっての意味
エージェントによる買い物を店が受け入れるか、受け入れるならどんな条件にするか(身元の提示、客の承認、支出の上限、データの使い道)を、大手の小売が規約の形で示した例といえます。Googleも米国で、AI ModeやGeminiから複数のストアの商品をまとめて買える「Universal Cart」を始めています。
- 自社ECの運営者:エージェントからのアクセスを、robots.txtや規約でどう扱うかを決めておく必要が出てくるかもしれません。
- 楽天市場・Amazonの出店者:楽天市場やAmazon.co.jpが同じような仕組みを用意するかは、発表されていません。エージェントが商品を比べるときは、価格・在庫・配送の情報が正確にそろっているかが、これまで以上に効いてくる可能性があります。
出典
- Walmart「Walmart Makes It Possible for Agents to Shop on Behalf of Customers, While Keeping Customers in Control」(2026年10月21日)
- Walmart「Walmart Agent Gateway」(2026年10月23日確認)
- Walmart「Walmart Agentic Access Terms」(2026年10月21日版)
- Walmart「Walmart.com Terms of Use」(2026年10月23日確認)
- Walmart「KKR To Sell Seiyu to Trial Holdings」(2025年3月5日)
- Amazon「Statement about Perplexity」(2025年11月4日)
- amazon.com robots.txt、amazon.co.jp robots.txt(2026年10月23日確認)


