OpenAI、NYT裁判で「AIの学習はフェアユース」とする意見書を紹介 米国政府や図書館団体、EFFなど20件

AB通信のニュースアイキャッチ。OpenAIが、AIの学習はフェアユースとする意見書を紹介

OpenAIは10月30日(米国時間)、記事「Fair use benefits everyone(フェアユースはすべての人の利益になる)」を公開した。米New York Times(NYT)がOpenAIを訴えている著作権の裁判で、AIの学習はフェアユース(公正な利用)にあたるとする意見書を裁判所に出した団体や専門家の文章を、抜粋して紹介している。意見書を出した中には、米国政府や図書館の団体、電子フロンティア財団(EFF)、作家の団体などが含まれる。OpenAIはNYTの訴えを「受けるに値しない支払いを求める狭い追求」と強く批判した。

目次

要するに何が起きたか(3行)

  • 何を公開:NYTの裁判で、AIの学習はフェアユースだとする意見書(アミカスブリーフ)の抜粋を、OpenAIが自社サイトにまとめた
  • だれが:米国政府、図書館や視覚障害者の団体、EFF、作家の団体、法学者、経済学者、元連邦議員、ベンチャーキャピタルなど、20の個人・団体(連名を含む)
  • 主な論点:学習は元の作品と目的が違う「変容的な利用」か、同じジャンルの作品が増えること(市場の希釈)は著作権の損害か、合法に入手したかを条件にすべきか

OpenAIの記事:意見書の抜粋を紹介

OpenAIの記事は、フェアユースが数十年にわたって医療や科学の進歩、新しい技術を支えてきたと書いたうえで、NYTの訴えは「半世紀の法の歴史と進歩を無視し、フェアユースという長年の原則を捨てるよう求めている」と主張している。さまざまな分野の専門家が、フェアユースを支持する意見書を裁判所に出しているとして、その抜粋を「本人たちの言葉で」紹介している。意見書の全文は、裁判所の公開記録で読めるとしている。

OpenAIの記事「Fair use benefits everyone」の冒頭と、意見書を出した団体・個人の一覧
OpenAIの記事の冒頭と、意見書を出した個人・団体の一覧。出典:OpenAI「Fair use benefits everyone」

意見書を出した個人・団体

記事で紹介されているのは、次の20の個人・団体(連名を含む)だ。

分野個人・団体
政府・元議員米国政府、Rick Santorum元上院議員とRick Boucher元下院議員
図書館・障害者・業界団体American Council of the Blind、Association of Research Libraries、American Library Association、Consumer Technology Association、Business Software Allianceの連名/CCIA(Computer & Communications Industry Association)/Chamber of Progress、Abundance Institute、Trevor Lawrence Jr.の連名/Engine、Developers Allianceの連名
市民団体・シンクタンクElectronic Frontier Foundation(EFF)、Public Knowledge、Foundation for American Innovation、AI Progress
作家・クリエイターAuthors Alliance、作家のKevin Kelly氏、音楽家のMichael Wall氏とコメディアン・作家のSarah Rose Siskind氏、ピュリツァー賞を受けた記者のRon Suskind氏と法学者のBrian L. Frye氏
研究者法学者のEd Lee氏とRebecca Tushnet氏、Matthew Sag氏、経営学者のJoshua S. Gans氏、図書館の技術の専門家のGregory Leppert氏、計算機科学者のMike Knoop氏、Daniel Lowd氏、Douglas Schmidt氏
投資家Khosla Ventures

意見書の主な論点

学習は「変容的な利用」か

CCIAは、AIの学習では作品を読ませたり配ったりするためではなく、統計的なパターンを取り出すために使うので、「裁判所が判断を求められてきた中でも最も明らかに変容的な利用の一つ」だとしている。法学者のMatthew Sag氏も、現実的な条件では、モデルの出力は学習の途中で作られる見えないコピーとまったく似ていない、と述べている。

計算機科学者の3氏は、モデルは文書の保管庫ではなく、特定の学習データを呼び出す住所やファイルのようなものはない、と技術の面から説明している。

「市場の希釈」は損害か

意見書の抜粋によると、原告側は、AIが同じジャンルの作品などをたくさん生み出すことで元の作品の市場が損なわれる、という「市場の希釈(market dilution)」の考え方を持ち出している。これに対し、Authors Allianceは、新しい作品が古い作品の売上や注目を下げることを、著作権法はこれまで制限してこなかったと反論。法学者のEd Lee氏とRebecca Tushnet氏も、ジャンルや事実には著作権がなく、この「希釈」の考え方は著作権を逆さまにするものだとしている。

入手の方法と、汎用の道具

EFFは、原告が「合法に入手したこと」をフェアユースの条件に加えようとしていること、また競合する作品を作るのに使われる可能性がある汎用の道具の開発者に不利に判断させようとしていることを、どちらも退けるべきだとしている。

米国政府の意見

米国政府は、NYTはOpenAIのモデルの学習をフェアユースから外すよう求めているが、それは著作権法の基本の原則と合わず、「科学と有用な技術の進歩」を大きく妨げると述べている。独立系や新しいメディア、NYT自身もLLMを報道などに活用していると指摘した。

影響:メディア・サイト運営者にとって

AIの学習をどう扱うかの議論は続く

今回の記事は、裁判の一方の当事者であるOpenAIが、自社に有利な意見書を選んで紹介したものだ。米国政府も「学習はフェアユース」とする立場で意見書を出しているが、記事は裁判所の判断には触れていない。

自社の記事を学習に使われたくない場合

裁判の結果とは別に、サイトの側でAIの学習を拒否する方法も整いつつある。OpenAIは同じ10月30日に、Google・Microsoftとともに、robots.txtでAIの学習の可否を共通の書き方で示す取り組みも発表している(関連記事)。学習に使われたくない場合は、こうした仕組みでの意思表示もあわせて検討したい。

注意点・補足

  • 紹介されているのは、OpenAIが選んだ意見書の抜粋だけだ。NYTの側を支持する意見書や、NYTの主張そのものは、この記事には載っていない
  • 裁判がいまどの段階にあるか、判断がいつ出るかは、記事には書かれていない
  • 「市場の希釈」がNYT側の主張であることは、意見書の抜粋の書き方から読み取ったもので、NYTの書面そのものは確認していない
  • この裁判は米国の著作権法のフェアユースをめぐるもので、日本の著作権法の扱いとは別の話になる

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出典

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