漏えい相次ぎ、個人情報を「持たない」企業・自治体が増加

漏えい相次ぎ、個人情報を「持たない」企業・自治体が増加
平山 大樹(AB通信 運営責任者)

平山 大樹 AB通信 運営責任者

AB通信 編集部が、企業・行政の公式発表や決算資料などの一次情報を確認して書いています。運営会社・編集方針

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この記事の要約

不正アクセスや委託先の事故が続くなか、会員制度やアプリで集めた個人情報そのものを「持たない」「減らす」選択をする企業や自治体が出ています。AB通信は各社・自治体の公式発表をもとに、2026年10〜11月を中心とした日本の事例を集めました。公式のお知らせで確かめられたのは、飲食・不動産・ポイントサービス・小売・自治体などの9件です。9件はいずれも2026年10月の1か月の間に発表されたもので、見直しの動きが短い期間に集中しています。この記事では、その9件を「漏えい前に自分から見直した例」と「漏えい後に見直した例」に分けて整理します。あわせて、委託先アララの事故でメルマガが止まった例と、国家サイバー統括室が求めた「保有情報の最小化」も触れます。小さな事業者向けに、LINEやゲスト購入でどこまで補えるかのチェックリストも付けています。

漏えいが起きる前に、自分から見直した例

次の例は、公式のお知らせで漏えいの記載がなく、リスクを減らすために会員機能や個人情報の保有をやめた・減らしたものです。

  • ゆで太郎システム(発表2026年10月28日):バースデークラブ終了。12月分クーポンのあと個人情報を消去
  • HOUSEMEDIA(2026年10月14日):会員機能・マイページ・お気に入りを廃止し、氏名やメールなどを削除。記事は登録なしで読める
  • ポイ探(全廃2026年10月31日):会員向けサービスをすべて終え、会員情報と各ポイントの認証情報を削除。不正アクセスの増加なども理由に挙げている
  • KIKISUU atelier(2026年10月13日):ネットショップの会員登録とログインをやめ、ゲスト購入だけにした
  • レンタルスタジオIrodori(2026年10月28日):使っていない旧予約システムに残っていた個人情報を削除し、LINE予約「よやくる」へ。自社サイトでは原則として個人情報を持たない

参考として、千葉県柏市は2025年6月に旧メール配信の登録情報を全件削除し、空メールでジャンルと地区だけを登録する配信に切り替えました。理由はシステム移行で、セキュリティが主目的とは書いていません(柏市のメール配信案内)。

漏えいのあとに見直した例

  • 物語コーポレーション(発表2026年10月20日):10月2日の焼肉きんぐアプリなどへの不正アクセスを受け、グループ11アプリで氏名と電話番号を持たない仕組みへ。メールは当面続けるが、将来はメールも持たない予定。新予約システムへの切り替えは2027年上半期の予定
  • DCMホールディングス(アプリ終了2026年10月15日):会員管理システムの不正アクセスで426人分が漏えいしたあと、会員証アプリ「マイボアプリ」を終了。会員制度自体は「DCM会員制度」として続く。アプリ廃止の公式な理由文は確認できていない
  • 大分県中津市(2026年10月):委託先アルカディアの不正アクセスを受け、「職員等参集システム」の登録者情報を全件削除。電話・FAXの緊急配信は一時停止し、参集は別システムへ移行済み
図解:個人情報を持たない・減らす事例。漏えい前に見直した例(ゆで太郎、HOUSEMEDIA、ポイ探、KIKISUU、Irodori)、漏えい後(物語コーポ、DCM、中津市)、背景(アララ事故と国の保有情報の最小化)
出典:各社・自治体の公式発表(2026年10〜11月中心)をもとにAB通信が作成。未確認の事例は含めていない

委託先アララの事故と、国が求めた「保有情報の最小化」

メール配信などを手がけるアララは、不正アクセスで約7,700万件のメールアドレスが持ち出された(またはそのおそれがある)と発表し、10月31日にサービスを止めました。影響は最大約380社に及ぶとしています(アララ公式PDF)。

これを受け、サンクゼールはメルマガ会員のメールアドレス87.8万件が漏えいしたとして配信を停止しました(サンクゼール公式)。新潟県柏崎市も市のメール配信を停止しています(柏崎市公式)。

国家サイバー統括室は2026年10月9日、事業者に対し、使い終わった情報はすぐに消す「保有情報の最小化」などを求めています(国家サイバー統括室の資料)。会員データを長く持ち続ける前提の販促は、漏えい時の被害と賠償のリスクが大きくなっている、という流れと重なります。

個人情報を持たないと、販促はどうなるか

誕生日クーポンやセグメント配信、アプリのプッシュ通知は、氏名やメール、電話番号を持つことで成り立ってきました。それらをやめると、個別の追跡や再来店の催促は難しくなります。一方で、漏えい時の説明責任や賠償、問い合わせ対応の負担は小さくなります。

代わりに使われているのは、ゲスト購入、LINE公式アカウントでの予約・クーポン、空メールやジャンルだけの配信、店舗での紙クーポンなどです。どこまで補えるかは業種と規模で違いますが、小さな事業者向けの目安を次にまとめます。

小さな事業者向けチェックリスト

  • 本当に必要な項目だけを集めているか(氏名・電話・生年月日が販促に必須か)
  • 使い終わった会員データや旧システムのバックアップを、期限を決めて消せるか
  • 会員登録なしのゲスト購入や、来店時だけのクーポンで足りないか
  • 予約やお知らせを、LINEなど自社サーバー外の仕組みに寄せられないか(委託先の事故リスクは別途確認)
  • 委託先(メール配信・予約・ポイント)の契約と、事故時の連絡体制を見直したか
  • 漏えいが起きたときに、誰に・何を・いつ知らせるかの文面を用意しているか

なお、この一覧には、公式のお知らせで確かめられた事例だけを入れています。

出典

更新履歴

  • 2026年11月5日:初版

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