平山 大樹 AB通信 運営責任者
AB通信 編集部が、企業・行政の公式発表や決算資料などの一次情報を確認して書いています。運営会社・編集方針
この記事の要約
オーストラリアのデザインソフトCanvaは、共同創業者でCEOのMelanie Perkins氏が社員向けに送った文書を公式ニュースルームで公開し、創業以来初めての大規模な組織見直しを発表しました。影響を受けるのは1,271人で、全社の22%にあたります。役割の変更、拠点への移動の打診、または退職のいずれかです。退職者の人数は公式には分けて示されていません。Perkins氏は「13年の歴史で最も厳しい瞬間」であり、「成長が10年ぶりに鈍化した」と説明しています。AB通信は、公式発表と、Canvaがこれまでに公表した利用者・売上の数字をあわせて整理しました。マーケターやデザイナーにとっては、テンプレート型のデザインツールが、生成AIとの競争とコストの両方で揺れているサインとして読めます。
公式が発表したこと
Canvaはニュースルームに「An important update on our team」を掲載し、Perkins氏が社員へ送った文書を公開しました。要点は次のとおりです(Canva公式)。
- 影響を受けるのは1,271人、全社の22%
- 一部は役割の変更、または中心拠点への移動を打診される。退職する人もいる
- Product・Growth・Platformを1つのProduct Orgにまとめる
- 細分化(subspecialisation)を減らし、層を減らして責任の重なりを整理する
- シドニーを製品チームなどの主な拠点にする。37か国にチームがある
- 来年(2027年)1月から、ほとんどのハイブリッド社員は週に2〜3日出社を想定
- 全社ミーティングは11月10日


退職する人への支援(公式)
- 場所を問わず、法定分を含めて最低6か月分の給与
- 直近1年で入社した人の、1年ベスティングの崖を外す
- 医療保険を提供している国では12か月継続
- EAP(Canva Care)を本人と家族へ12か月
- キャリア支援(コーチング、面接準備)、LinkedIn Premiumを1年
- 退職者向けの任意の人材ディレクトリを投資家・パートナーへ共有
- 会社のMacBookを持ち帰れる
- 起業や地域活動向けのCanva Collective Fund(1万ドルの助成)。12月14日までに興味登録。出資や持分は取らない
理由:CEOの説明
Perkins氏は、新しい技術が「何を・どう作るか」「製品に何を求めるか」を変えているとし、今年は「これまでで最も厳しい年」で、「成長が10年ぶりに鈍化した」と説明しています。小さな手直しでは足りないため、小さな自律チームに戻す「refound」が必要だ、という論理です。人員削減の発表では、利用者数の増減や理由となるAI競合の名前には触れていません。
利用者・売上など、公式の最新数字
人員削減の発表自体に、最新の月間利用者や売上の表は付いていません。AB通信がCanvaの別の公式発表から、時点付きで拾った数字は次のとおりです。
| 指標 | 数字 | 時点・出典 |
|---|---|---|
| 月間利用者 | 2.6億人 | Canva「2025 in review」(2025年の振り返り) |
| 月間利用者 | 2.65億人超 | Canva「Canva Code 2.0」発表文(2026年の別記事) |
| 売上 | 35億ドル | Canva「2025 in review」 |
| Fortune 500での利用 | 95% | Canva「2025 in review」 |
| 教育(教員・生徒など) | 毎月1億人 | Canva「2025 in review」 |
Canva自身のAIと、競合の動き
Canvaは2025年にCreative Operating SystemやCanva Design Modelを打ち出し、Affinityを無料化するなど、テンプレート以外の制作領域にも広げています(2025 in review)。一方で、ChatGPTやGeminiなどの画像生成・デザイン支援、AdobeやFigmaのAI機能も、同じ「短い指示で見た目をつくる」需要を取りにいっています。
マーケター・デザイナーにとっての意味
- テンプレートとブランドキットで回していた制作フローは、生成AIの「一発生成→軽い直し」と競合しやすい
- CanvaのAI機能(Magic Studio系やCanva AIなど)自体も強化されているため、「乗り換えるか、Canva内のAIを使いこなすか」の両方を見る必要がある
- チーム向け(Business / Enterprise)は公式が強調してきた領域で、Fortune 500の95%が使うとしている。個人利用とは分けて動きを追う
- ツール選定では、書き出し形式・ブランド管理・権限・監査ログなど、生成の速さ以外の要件を先に決めておくと揺れにくい
今回の発表は「デザインが不要になる」という話ではなく、誰でも見た目をつくれる市場で、組織とコスト構造を作り直す動きだと読むのが近いです。推測であって、Canvaがそう断じたわけではありません。
出典
- An important update on our team(Canva Newsroom、2026年11月5日確認)
- A transformative year for Canva: 2025 in review(Canva Newsroom、2026年11月5日確認)
- Canva Code 2.0(Canva Newsroom、月間2.65億人の言及、2026年11月5日確認)
更新履歴
- 2026年11月5日:初版


