顧客の購買行動を予測し、より効率的なマーケティング活動をするために考案されたカスタマージャーニー。
施策を打つ際に、ペルソナを作ったり、予算を決めたりする企業は多いですが、どのタイミングでどのようなアプローチするのかまで考えている企業は少ないですよね。
カスタマージャーニーを策定し、想定される顧客の購買行動を細かく予測しておくことで、より顧客の心理が理解でき、施策の幅や量が広がります。
この記事では、カスタマージャーニーとは何か、作成する方法、テンプレートなどを交えて具体的に解説します。
読み終えれば、あなたもカスタマージャーニーを自社でも制作できるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
カスタマージャーニーとは「顧客が商品・サービスを購入するまでの流れ」のこと
カスタマージャーニーとは、見込み顧客が商品・サービスの認知して、実際に購入するまでの行動を時系列ごとに並べて見える化したモノのこと。
細部に至るまでに行動を予測することで、どのタイミングでどのような情報提供が必要なのかを理解できるようになります。
現在の私たちは、新聞やテレビなどのマスメディアだけではなく、WebやSNS上から様々な情報を入手するようになりました。
その結果、企業側の集客チャネルは多様化し、少ない予算でも広告を打てるようになりましたが、逆にユーザーの行動心理を理解するのが難しくなっているのも事実。
複数化しているチャネルの中で、顧客とのタッチポイントで、アプローチする内容・タイミングなどが重要になったことで、カスタマージャーニーはさらに重要視されています。
具体的なカスタマージャーニーの事例
具体的に、各企業ではどのようなカスタマージャーニーマップが作成されているのでしょうか。
まず日本でも圧倒的な人気を誇っている家具メーカー「IKEA」では、下記のようにカスタマージャーニーマップが作成されています。
IKEAに行ったことのある方は分かるかもしれませんが、IKEAでは店内がひとつの導線になっており、入店から退店までまるでアトラクションのように楽しめますよね。
カスタマージャーニーマップを見てみると、IKEAに入店した顧客が各ポイントでどのような体験をして、気分になるのか、などを具体的に設定していることが分かります。
ただ単純に家具を並べているのではなく、入念に顧客心理を考えた上で、戦略的に並べているというのも非常に面白いですよね。
カスタマージャーニーとペルソナの違い
カスタマージャーニー | 顧客の購買行動を理解し、時系列順に順序立てて並べたもの |
ペルソナ | 自社商品を購買する顧客を、年齢、性別、属性など細部に至るまで想定したもの。 |
カスタマージャーニーとペルソナの違いは、カスタマージャーニーが「流れ」であるのに対して、ペルソナは「人物像」を想定したものであるという点。
ペルソナは顧客を理解し、ターゲットを決めるのには適していますが、全体的な販売戦略を立てるのには向いていません。
きちんとカスタマージャーニーを作成することで、全体的な流れを理解することでき、結果的に販売しやすくなるのです。
カスタマージャーニーは古いのか?
カスタマージャーニー自体は、最近出てきた考え方ではないので「時代遅れ」「古い」などと言われてしまうことも少なくありません。
実際にいくらカスタマージャーニーを入念に練ったとしても、顧客は意外な購買ルートを見つけてしまうため、驚くべき行動を取ることもあります。
特に現在はSNSなどで積極的に情報収集するユーザーが増えているため、カスタマージャーニーを設計しても意味がないのでは?という指摘もあるのです。
しかしこれは一元的にカスタマージャーニーを作成したり、長い間更新しなかった場合に起こるものであり、あまり適切な指摘であるとは言えません。
現在はMAやCRMなどの便利なツールが多数存在しており、顧客をデータベースで管理、見える化などがしやすくなっています。
顧客の反応、その結果なども簡単に把握できるので、その都度カスタマージャーニーの数を増やしたり、更新したりすれば良いだけの話です。
あくまでも購買顧客の導線を作っておくというのは、非常に重要なことなので「古いから作らない」という思考にとらわれないようにしましょう。
カスタマージャーニーを設定するメリット3つ
カスタマージャーニーを設定するメリットは主に3つ。
- 顧客視点で考えられる
- より深く顧客ニーズを捉えられる
- 各段階での課題設定の認識共有
より具体的に顧客のニーズを理解するためにも、必要不可欠なので、ぜひ覚えておきましょう。
顧客視点で考えられる
「マーケティングは顧客理解である」とも言われていますが、ついつい顧客視点を忘れてしまいがち。
売り手目線でマーケティング施策を打ったとしても、上手くいかないことが多く、顧客への理解が足りていないケースがほとんどでしょう。
カスタマージャーニーを作成することで、具体的にどのタイミングで、顧客が何を考えるのかを理解することができるようになります。
顧客視点で考えることによって、より商品・サービスをニーズに沿って販売できるようになるのも大きなメリットだと言えるでしょう。
より深く顧客ニーズを捉えられる
カスタマージャーニーを作成すると、ペルソナを作成しただけでは見えない、流れの中での顧客ニーズを捉えることが出来ます。
顧客のことを考えたつもりになっていても、適切なタイミングで適切な情報提供をしないと、なかなか顧客ニーズを捉えるのは難しいもの。
ペルソナを設定するだけでも、顧客理解は大きく深まりますが、まだ不十分です。
流れの中で、顧客のニーズを捉えられるという意味では、カスタマージャーニーは非常に重要なので、必ず設計してみてくださいね。
各段階で課題設定の認識共有
マーケティング施策を行っていく際には、ひとりではなく多数のメンバーと認識をすり合わせながら行っていく機会がほとんどですよね。
実際に施策を行っている際に、顧客に対してどうアプローチしているのか、その上でどんな課題が生まれているのかなどの認識共有を行わねばなりません。
カスタマージャーニーを作成することによって、社内外の関係者間で、各段階での課題簡単に認識を共有しやすくなります。
段階的に課題を解決し、次の施策を設定していくためにも、カスタマージャーニーは非常に重要な役割を担っているのです。
カスタマージャーニーを設定するデメリット2つ
一方で、カスタマージャーニーを設定する際のデメリットは2つ。
- 作成者の1人よがりになる可能性がある
- 更新し続けないと陳腐化する恐れがある
双方ともデメリットとして非常に重要な点なので、ぜひ覚えておくように心がけましょう。
作成者の独りよがりになる可能性がある
カスタマージャーニーにおける最大の問題点は、作成者が考えた思考が間違っていた場合、誤った施策を打つことになる危険性があるということ。
よくありがちなのは、作成者の「こうあって欲しい」という願望に基づいてカスタマージャーニーを作成した結果、事実を見失った施策を打ってしまいます。
作成する際は、きちんと事実ベースで作成し、何度も顧客の視点に立てているのか考えてみるようにしましょう。
更新し続けないと陳腐化する恐れがある
顧客の購買行動は常に移り変わっているため、一度作成したカスタマージャーニーが上手く現実にマッチしないことも少なくありません。
施策を実行する度に、顧客行動に対するデータは貯まっていくので、定期的に更新して刷新していくことも重要です。
カスタマージャーニーは基本的には、更新し続けないと陳腐化してしまう可能性が高いので、必ず更新し続けるように心がけましょう。
カスタマージャーニーの作り方
実際にカスタマージャーニーマップを作る際の流れについて具体的にまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
ペルソナを設定する
カスタマージャーニーをきちんと設計するために、ペルソナを明確に設定することは不可欠です。
ペルソナを設定する際は、
- 名前
- 年齢
- 性別
- 職種
- 居住地
- 趣味
- 家族構成
などをなるべく詳細に考案した上で、その人がどのように感じて、商品に辿り着いたのか、ストーリーまで考えておけるとベスト。
きちんと理解してもらうためにも、ペルソナを設定するということを忘れないようにしましょう。
顧客の情報収集を行う
カスタマージャーニーの作成で最も重要なのが、顧客に関する情報収集を行う段階です。
調査方法としては、過去データ分析、定量調査など、またユーザーインタビューなどを行い実際の声を参考にするなど様々な方法が存在します。
既にマーケティング施策を実行しているのであれば、データも貯まっているので、情報をまとめやすいでしょう。
情報収集を行うだけで、かなり顧客について詳しく理解することが出来るので、ぜひとも収集してみてくださいね。
想定されるユーザーの行動プロセスを考える
情報を集めることが出来たら、今度は想定されるユーザー行動のプロセスを考えてみましょう。
今までの材料を元に、具体的に行動プロセスを読むことによって、かなり実際のカスタマージャーニーに近づきます。
行動プロセスを具体的に考える際には、
- どこで自社商品・サービスを見つけるのか(認知)
- 検討のタイミングで比較する他社商品は何か
- どのタイミングで購買を決定するのか
などあくまでもプロセス(時間・場所・モノ)などを無機質にまとめてみることが大事です。
この作業を行うことで、カスタマージャーニーが段階的になり、考察を深めやすくなるのです。
各段階でのユーザーのニーズ・課題などを考察する
フェーズごとにユーザーが何をするのかが決まったら、今度は各段階でのユーザーの心理を徹底分析します。
ニーズや課題などをきちんと理解することによって、ユーザーがどのタイミングで何を考えているのかが理解できるように。
この作業で、事実と感情を結びつけることによって、より深い考察ができるようになり、施策を具体的に打ちやすくなるのです。
深くニーズを理解したいのであれば、考察する段階できちんとユーザーのニーズを捉えておきましょう。
以上で、カスタマージャーニーは、ほぼ完成です。
視認しやすい形式に仕上げる
カスタマージャーニーが完成したら、社内で共有しやすいように、視認しやすい形式に仕上げておきましょう。
イラストを活用するなどして、視認性を上げておくことで、誰でもカスタマージャーニーを理解しやすい形にしておくことが出来ます。
カスタマージャーニーの作成で使えるテンプレート
ここでは実際にカスタマージャーニーを作成する時に使えるテンプレートを用意しておきました。
テンプレートを利用することで、より完成度の高いカスタマージャーニーを作成できるので、ぜひ作成する際に利用してみてくださいね。
カスタマージャーニーが学べる本
さらにカスタマージャーニーについて学びたいのであれば、書籍で学んでみると理解が深まります。
今回は3つのカスタマージャーニーに関する本を紹介しているので、興味のある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
- はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ(MarkeZine BOOKS) 「顧客視点」で考えるビジネスの課題と可能性
- たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング
- コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ(MarkeZine BOOKS) 「顧客視点」で考えるビジネスの課題と可能性
カスタマージャーニーの作り方について、非常に詳しく解説している本著では、「顧客視点」で考えることはどういうことか知ることができます。
著者の加藤希尊氏は、外資大手広告代理店(WPP)に12年間ほど勤務した後、セールスフォース・ドットコムで広告主としてカスタマージャーニーの作成などを経験したプロ。
顧客視点で考えたカスタマージャーニーマップというのは、どうやって作ったらいいのか等、かなり具体的に学びたい方におすすめの一冊です。
ジョブ理論
カスタマージャーニーにおける本質は顧客を理解することですが、その顧客理解に関する考え方を事例を交えて詳しく教えてくれるのが本著。
米国・日本でベストセラーにもなっているジョブ理論は、顧客の本当に解決したい課題(=ジョブ)を見つけるにはどうすれば良いのかを具体的に解説してくれています。
具体的なカスタマージャーニーの作成よりも、まずはマーケティング視点から、顧客の課題を見つける方法について知りたい方におすすめです。
コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
マーケティング界の巨人、フィリップ・コトラーが「価値共創」を軸に理論を展開しているのが本著。
本の中でコトラーは、ソーシャルメディアの発達や市場の成熟によって、顧客を満足させるだけのマーケティングでは事足らなくなってしまっていると説いています。
カスタマージャーニーを考える上でも、より顧客が価値を感じているものは何かを考えた上で、設計することが非常に重要なので、ぜひ一読して欲しい1冊です。
まとめ|カスタマージャーニーを活用して戦略的に成果を出そう!
顧客への理解を深めて、マーケティング施策をより戦略的に実現するためには、カスタマージャーニーの活用が欠かせません。
カスタマージャーニーは古いとも言われていますが、実際に先に作成しておくのと、おかないのとでは、その後の施策の質に大きな差が生まれます。
また「点」ではなく「線」で捉えることによって、より流れの中で顧客心理を理解することが可能になるというメリットも。
社内で課題を理解し、共有する上でも非常に有効な手段なので、まずはカスタマージャーニーを積極的に活用してみてください。