採用マーケティングとして社員インタビュー記事の充実化を図る企業が増えているなか、「他社との差別化が難しい」「内容がありきたりになってしまう」という悩みも聞こえてきます。
今回は、社員インタビュー記事の質を高める制作プロセスのポイントと魅力化するコツを紹介します。
社員インタビュー記事で得られる2つの効果
社員インタビュー記事をより良いものにするには、前提として記事制作で得られる効果を知っておくことが大切です。主に次の2つがあります。
インタビュー記事効果1:採用ブランディング効果を高める
ブランディングとは、自社のイメージを浸透させ、他社との差別化を図りながら独自のポジションを獲得する活動のことをいいます。
採用ブランディングでは、たとえば「〇〇社といえば柔軟な働き方ができる会社」「〇〇社といえば先進的なサービスをつくる会社」というように、企業の魅力や特長をイメージとして浸透させ、ターゲット人材に効果的にアプローチしていきます。
売り手市場が続く昨今、人材獲得が困難なことにくわえ、採用ミスマッチによる離職率の高さを課題とする企業が多くなっています。この問題を解消する方法として、採用ブランディングの有効性が認識されつつあります。
社員一人ひとりのリアルな声を届ける社員インタビュー記事は、大きな広告費をかけずに企業のブランド化に貢献する手法として、あらためて注目を集めています。
しかし言い換えると、採用ブランディングに生かす記事をつくるには、どのようなイメージをつくっていくべきかを戦略的に考える必要があるということ。この点に留意しながら記事制作を行うことが重要になります。
インタビュー記事効果2:社員のエンゲージメントを高める
社員インタビュー記事で得られるもうひとつの効果は、社員と会社とのつながりを強くするということです。
インタビューを受けた社員は、自身が歩んできた道にスポットを当てられることで、会社への貢献を実感できたりモチベーションアップにつながったりします。
また、インタビューを読んだ他の社員にとっては、同僚の考え方や働き方を知るきっかけになるなど、社員同士の交流の活性化も期待できます。
記事品質を上げる制作プロセスとポイント
では、実際の制作プロセスを見ていきましょう。社員インタビュー記事の制作では、事前準備が記事の質に大きく影響します。基本的な流れは大きく6ステップです。
ステップ1:記事の目的を決める
まずは社員インタビュー記事で何を伝えたいのか、ゴールを明確にします。採用ブランディングにおける記事制作では、主に以下を目的とすることが多くなっています。
- 企業理念への共感を得る
- 組織風土への共感を得る
- 働いている人材の魅力を伝える
- プロジェクトや仕事内容の魅力を伝える
- 社内制度の魅力を伝える
- 成長できる場があることを伝える
自社に対して「どのようなイメージを持ってほしいか」「もっとも伝えたいメッセージは何か」。この2つの観点から優先順位を決めるのがポイントです。
ステップ2:企画を決める
目的を明確にしたら、次に企画内容を具体的にしていきます。企画の策定は、多くの担当者の悩みどころでしょう。ここでは目的別に切り口の例をまとめてみました。ぜひ参考にしてみてください。
「企業理念への共感を得る」
- 社員に取材:入社の動機、現在のやりがい、今後実現したいこと
- 経営層に取材:事業ヒストリー、今後のビジョン、社会貢献への取り組みや思い
「組織風土への共感を得る」
- 社員の価値観や働き方の特徴と取り組み
- 社員のコミュニケーションの特徴と取り組み
「働いている人材の魅力を伝える」
- 失敗と成功のリアルストーリー
- 多様な人材の存在
- 特徴的なキャリアステップ
「プロジェクトや仕事内容の魅力を伝える」
- プロジェクトの開発秘話やヒストリー
- 仕事のノウハウや1日のタイムスケジュール
- 社員のこだわりや思い
「社内制度の魅力を伝える」
- ワークライフバランスの取りやすさ
- 女性の働きやすさ
「成長できる場があることを伝える」
- 教育体制とその効果
- 挑戦できる仕組みと実例
ステップ3:記事のコンセプトを決める
続いて、記事の方向性を定めるコンセプトを決めます。コンセプトを考えるときは、どのようなことを狙った記事にするのか言語化するのがポイントです。例を挙げてみましょう。
目的:プロジェクトの魅力を伝える
企画:プロジェクトの開発ヒストリー
狙い:社会の構造を変える面白い仕事ができることをアピールする
コンセプト:まだ世の中にないものをつくる!素人集団の「○○開発ストーリー」
このように、狙いとコンセプトが具体的になると、誰にどういった内容をインタビューするべきか全体の流れが見えてきます。
ステップ4:取材する社員を選定
記事の方向性が決まると取材対象となる社員が明確になります。
社員インタビュー記事は一般に取材者と社員とのQ&A形式が多くなっていますが、ほかにも、社員同士の座談形式にする方法や、取材者の解説をくわえながら進める形式のものもあります。目的・コンセプトがより伝わりやすい形式を考えて人選しましょう。
ステップ5:取材準備~取材当日
社員の選定ができたら、取材の準備です。コンセプトに沿って質問項目を決めます。60分の取材であれば、必ずヒアリングしたい質問は5つ程度、予備の質問を合わせて10個ほど用意しておくとよいでしょう。
取材時に多い失敗は、時間配分がうまくいかず聞きたいことを全部聞けなかったというパターンです。
これを防ぐポイントは、取材する社員に「取材目的」「記事のコンセプト」「質問予定項目」を事前に共有しておくことです。インタビューを受ける側も話す内容を整理しておけるので、スムーズに進行しやすくなります。取材しなくても分かるような基本情報は事前にシートに記載してもらうなどして無駄な時間をかけないように工夫しましょう。
取材では、ヒアリングしないと分からないエピソードやそのときに感じたこと、考えたことを聞きだすことが重要です。社員一人ひとりのストーリーをとらえることで、独自性のある記事制作が可能になります。
ステップ6:執筆
社員の言葉でつづられる社員インタビュー記事では、とくに「分かりやすさ」と「共感ポイント」に注意して執筆する必要があります。以下の点を押さえておきましょう。
冒頭で登場人物を明確にしておく
冒頭で「誰が何について語るのか」を明確にしておきます。部署やポジション、キャリアなどのバックボーンを最初に明記することで、読み手はスムーズに内容を理解できるようになります。
社外の人でも分かる言葉を使う
社内で使われている略語や業界の専門用語などは、読み手には分かりにくいものです。一般的な言葉に置き換えて表現するか、注釈をくわえて分かりやすくしましょう。
読み手の共感ポイントを意識する
たんに事実が述べられているだけの社員インタビュー記事では、読み手の共感を得ることはできません。企業のファンづくりを目的に展開する記事制作の場合、読み手の「読後感」を想像しながら執筆することがとても重要になります。
社員のエピソードや印象的な言葉などを生かしながら、読み手の感情や価値観に訴えかけるものになっているかを意識してみましょう。ただし、自社を持ちあげすぎる内容は、信ぴょう性が乏しくなり逆効果になることがあります。
執筆後に他の社員に読んでもらいフィードバックを受けるなど、客観的にチェックしてもらうのもおすすめの方法です。
社員インタビュー記事を魅力化するコツ4つ
ここまで、社員インタビュー記事の品質を上げるための制作プロセスとポイントを説明してきました。しかし採用ブランディングに効かせるには、さらに「印象に残る」記事にする必要があります。ここでは、記事を魅力化するコツを紹介していきます。
記事魅力化のポイント1:起承転結を明確にする
社員インタビュー記事を印象的なものにするには、社員のリアルな姿をストーリーとして見せることが重要なポイントになります。起承転結があるストーリーは人の記憶に残りやすく、イメージづくりに高い効果を発揮するからです。
話の順番はテーマや内容によって前後してもよいのですが、ストーリーとしての起承転結がしっかり盛り込まれているか、流れに違和感がないかをチェックしましょう。
記事魅力化のポイント2:具体的なエピソードを入れる
なぜその行動にいたったのか理由や結論が述べられているだけの記事よりも、具体的なエピソードで語られているほうが、読み手は社員の心情に共感を抱きやすくなります。取材をするときは、記事のコンセプトを象徴するようなエピソードに重点を置いてヒアリングしましょう。
記事魅力化のポイント3:本音に触れる
採用広報に使うとなると、ネガティブな内容や踏み込んだ情報を発信することにためらいが生じることもあるでしょう。しかしこれが、ありきたりの内容に終始してしまう原因のひとつです。
明らかに企業のイメージダウンにつながることや、社員の承諾を得ずに掲載することはNGですが、ストーリーの一部分として欠かせない要素であれば掲載する方向で検討してみてください。
社員の本音が書かれているかどうかは、思っている以上に読み手に伝わるものです。包み隠さず掲載する企業に対しては、信頼と共感が生まれやすくなるというメリットもあります。
記事魅力化のポイント4:社員のパーソナリティを生かす
登場人物のキャラクターが生かされている物語には魅力があります。インタビュー記事も同様で、社員のパーソナリティが伝わる文面は読み手をひきつけます。とはいえ、プロのライターであってもパーソナリティを表現する執筆は簡単ではありません。
コツは、社員の言葉をそのまま使ってみることです。だらだらと長く続くコメントは推奨できませんが、取材時に印象に残った言葉や、社員が熱心に話した事柄には個性が表れているものです。記事の独自性を印象づけるうえでも、社員の個性を生かす工夫をしてみてください。
その記事は「一緒に働いてみたい」と思わせる内容になっているか
社員インタビュー記事の面白さであり難しさでもあるのが、インタビュアーによって記事の内容が違うものになることです。インタビュアーが何に着目し、どんな話を引き出すかによってストーリーの内容も魅力も変わります。
社員インタビュー記事を面白くしたい、独自性を打ち出して差別化を図りたいという場合は、その記事が「一緒に働いてみたい会社」と思わせる内容になっているか、ぜひ本記事を参考に確認してみてください。